自他の感情に気づき自らの感情を制御することで、より良い意思決定や対人関係構築につなげる能力。それが感情知能とか感情的知性と訳されるエモーショナルインテリジェンス(Emotional Intelligence)です。(※以下、通例にしたがってEQ=Emotional Intelligence Quotientと表します)

グローバルな信頼性の高いアセスメントを通して、日本人のEQは調査対象の160ヵ国(20万人)中、最下位という結果になりました。そしてWHOによる心身の健康度と幸福度を総合した指標(National Well-being Metrics=国別健康指標)とのクロス分析により、EQと健康水準の相関が明らかになっています。

上のグラフのX軸がEQ、Y軸が国別健康指標です。EQが低くて健康指標が高い左上にくる国は少なく、有意差のある正の相関が示されているのです。

EQのデータは、日本を含む世界25か国に拠点をもつシックスセカンズの調査によるものです。上のグラフの〇の色が濃いのは、ポジティブな思考や行動を生み出すために感情を制御する能力(感情のナビゲート)能力が高いことを示します。

さらにグラフの〇の大きさは、EQスコアとともに導き出されるWell beingを示しています。WHOの国別健康指標とEQ側からのWell beingが相関していることも、グラフからうかがわれます。

働き方改革が叫ばれるようになって久しいですが、どれだけ健康にまつわる複雑な背景と、そこに関連する要因が理解されているでしょう。前述した感情のナビゲートは、EQを構成するコンピテンシーのひとつです。この能力がEQコンピテンシーのなかで、もっともWHOの国別健康指標と正の相関が高いこともわかりました。

身体と心の健康、それに幸福感。これらが高くなると、感情をポジティブな方向に導く能力も上がるのでしょうか。仮に因果関係が認められるとしても、健康や幸福が非常に複雑な要素によって構成されていることを想定するなら、因果関係を具現化するのは容易ではないかも。

それよりも、状況にかかわらず感情をポジティブな方向に導く能力を磨くことで、健康や幸福のスコアを上げるほうが現実的に思えます。EQは抽象的な精神論ではなく、神経科学にもとづく開発可能な領域だからです。

ただしここで気をつけなければならないのは、相関は因果関係を示すとはかぎらないことです。

仮の話ですが、「体重の重いドライバーのほうがスピード違反を犯す確率が高い」という正の相関が出たとします。しかし常識的に考えて、体重とスピード違反に因果関係があるとは考えにくいでしょう。

しかし体重が重い=男性、体重が軽い=女性という第3の要素をみつけると、因果関係がわかります。

EQと健康・幸福の相関のなかに、欠けているパズルは何だろう。それを探求していく必要もありそうです。私は他の研究を関連づけてみると、人とのつながりの量と質、これが鍵になりそうだと考えているのですが。

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