DHBRから翻訳刊行されている『エモーショナルインテリジェンスシリーズ』第1弾の『共感力』。著者の一人であるダニエル・ゴールマンは、共感を①認知的共感(他者の視点を理解する能力)②情動的共感(他者の感情をくみ取る能力)③共感的関心(相手が自分に何を求めているかを察知する力)・・・と分類しています。

しかしこれまでの心理学のなかでは、①と②の2つで説明されていることも多いです。私たちMBCCのプログラムでも、①と②をバランスよく磨くことで、自ずと獲得できるのが③だという立場です。また上記著書の②の説明は「他者の感情をくみ取る能力」とありますが、実際は相手に起こっている情動(身体反応を伴う感情の動き)を、自分自身も一緒に感じているということです。だから自己の感情についてのリテラシー(情動をリアルタイムに届く体内データとしてキャッチする能力)が、他者を理解する出発点になります。このあたりは著書でもふれられているところです。

相手に共感を示すということは、無理に合わせるとか、怒りなどのネガティブ感情を抑え込むことではありません。本書の中にこんな記述があります。

< 怒っていない素振りを演じながら接するのはやめたほうがよい。スタンフォード大学のエミリー・バトラーらの研究によれば、こうした見せかけの態度は自分と部下両方の血圧を上昇させるという。 > E.Butter et al.,”The Social Consequences of Expressive Suppression,” Emotion 3,no.1(2013):48-67.

無理に抑え込もうと我慢するのではなく、ほんとうに落ち着いた状態で制御する必要があるのです。

< 一歩退いて、自分の感情的反応をコントロールする必要がある。>

でもこの話だけだと、「言っていることはわかるけど、それが実際にできたら苦労しないよ」というのが、ふつうの人の感覚ではないでしょうか。実際に企業研修でこの話題にふれると、必ずそういう反応が出てきます。

本書では言及箇所は少ないのですが、ここで重要なのがマインドフルネス瞑想です。仕事などの現場で事が勃発しているときにどうするかの前に、そうした事態を想定して心を耕しておくのにマインドフルネス瞑想が有効なのです。

優れた聴き手の特徴として、本書は次の4つを挙げています。これは私が思うに、正確に理解するのが容易ではないところです。コンサルティング会社のCEO(ジャック・ゼンガ―)と社長(ジョセフ・フォークマン)の共同執筆による論文で挙がっているのは、

①よい傾聴は、相手が話している間に黙っていればよいというものではけっしてない

②よい傾聴は、相手の自己肯定感を育むようなやり取りを伴う

③よい傾聴は、協調的な会話のようなものである

④よい聞き手は、提案を投げかける傾向がある

著者らは多面評価で出てきた特徴にもとづいて、このように優れた聴き手を説明しています。

しかし私の現場感覚でいうと、この後の記述がとても重要です。傾聴にはさまざまなレベルがあり、段階を踏んで上記のような「よい傾聴」につながるということです。

暗黙知化された「優れた聴き手」の聴き方というのは、たとえば一流のテニスプレーヤーの一連の動きのようなものです。多くの人は、そこに至るために、いくつもの段階をたどる必要があります。

ここを押さえておかないと、聴こうと思ってもつい話に割って入ってしまうとか、提案しすぎて会話の主導権を奪ってしまうとか、なんだか上辺の誉め言葉で相手が引いてしまう、といった事態に陥るのです。

『共感力』という本に共感せずイチャモンつけているように思われるかもしれませんが、いい本ですよ。ただ本当にこの種の論文を血肉とするには、知行合一・・・の行の部分、実践が不可欠です。

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2月2日(土)福岡

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