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ストレスを感じた瞬間、「胃がキリキリしているぞ」「胸がムカムカと発火しているみたいだ」といったように、身体に生じていることを言語化することで、ストレス緩和とネガティブ感情の制御につながる、という研究は以前から多くあります。

こうした方法を感情(情動)のラベリングとか実況中継と呼び、マインドフルネスのセミナーでも紹介されます。ただこの方法は、そもそも当事者がマインドフルネスであること(今この瞬間に注意を置いていること)が前提なので、「瞑想はしたくないけど、ストレスマネジメントにこれだけやる」というわけにはいきません。

さらにもう一つ、ラベリングの壁があります。それは身体反応である情動を的確に言語化するには、相応の語彙が必要だということです。EQ(感情的知能)のトレーニングをしてみるとわかりますが、感情を言葉で表すことが難しいと感じる人は多いのです。

そこでラベリングのハードルを下げる方法として、あらかじめ用意された感情ラベルの選択肢から選ぶことで、多くの人が簡単に感情を制御できる可能性が研究で報告されています。(Anual Letters of Clinical Psychology in Shinshu 117NO.16 p39-49)

用意された感情用語から選ぶということは、今この瞬間のピュアな自分の感情から注意をそらして距離を置くことになります。したがってこれ自体はマインドフルネスのアプローチではありません。ほんらいは自分の内的な感情に光を当て、そこから言語化することによってリアルに自分の感情をラベリングしていきます。ただ前述したように、それは簡単なことではありません。選択肢の揃え方を工夫していけば、マインドフルネスに慣れている人が行う、ピュアな感情のラベリングに近づけるための有効な手助けになるかもしれません。

また興味深いのは、選択肢を使わないピュアなラベリングでは、感情を認知する覚醒度が高くなっているのに対し、選択肢を用いるラベリングは覚醒度が低くなっていること。仮説として、マインドフルネスを習慣化している人は”嫌な経験”をクリアに観察して制御できるけれど、マインドフルネスを習慣化していない人はそうはいかない。ただしその一方で、マインドフルネスを習慣化していない人でも外部の選択肢を使うことで、”嫌な経験”から一定の距離を置いてクールダウンし、ネガティブ感情の制御が可能。そういう可能性が見えてきます。

選択肢に頼った”非マインドフルネス”的なやり方では、どんどんマインドフルネスから自分が離れてしまうのではないか・・・そんな声も聞こえてきそう。しかし感情を言語化する、ということ自体に変わりはありません。激しい反応が起きるたびに言語化を試みるということは、理性脳である前頭葉が”有事”に仕事できるよう鍛えることになります。言葉にすることで感情脳の暴走を防ぎ、制御する中枢機能が鍛えられるのです。だからどちらの方法も私はありだと思います。

(参考:感情のラベリングの方法の違いが感情変化や認知的不可に及ぼす影響の検討 北澤加純、高橋知音)