F1にホンダが7年ぶりに復帰して話題になっていますが、地上最速マシンを人に置き換えてみると、奇妙な現実に気づきます。

F1マシンって、極めて精緻に造られており、それを極限状態で走らせなくてはなりません。ですから最高のパフォーマンスを発揮させるには、最高のメンテナンスが同時に不可欠なわけですよね。

これ、ある意味、F1マシンより複雑で精緻な人間にも当てはまることではないかと思います。ところが組織の現場における人材マネジメントを観察すると、パフォーマンスばかりに意識が向いていて、メンテナンスが軽視されているチーム、とても多いのです。

パフォーマンスとメンテナンス。これはPM理論として有名です。仕事に厳しく、人のケアは苦手なP重視のリーダー。仕事よりも、人の面倒見がよいM重視のリーダー。どちらもいけてないリーダー。もちろんいずれも望ましくありません。PとMを高度に両立させなければ、人とチームをサステイナブルに発展させることはできないでしょう。

コーチとしてビジネスリーダーに関わるときも、私はこれをとても意識しています。この人が取り組もうとしているパフォーマンスにどう働きかけ、この人が目を向けているメンテナンスをどう支援するか。当然、両者またはいずれかが軽視されている場合も。

これは定性的な感想で未だ構造化はできていませんが、本人の価値観や思いとは無関係に、出来上がっている組織の風土、社会的な常識(と思われていること)といったフレームのなかで、ひたすらエンジンと車体と、それを支えるタイヤを酷使して勝利をめざす・・・そのやり方を、貫こうとしているリーダーが多い。

思うに、それを積極的に好んで選んでいるのではなく、それしか見えないのでしょう。また人によっては、止まったら負け・・・メンテナンスどころじゃないと、そう自覚的にとらえている人もいるでしょう。

しかしPM理論では、パフォーマンス偏重でメンテナンスの弱いマネジメントは短期的にはメンテナンス>パフォーマンスのマネジメントに較べて成果を上げるけれど、中期的には、むしろメンテナンス寄りのマネジメントに劣るとされています。どちらにせよ高度なバランスを見出していく必要があるのですが。

メンテナンスが施されずに、時速300キロでレーシングコースを疾走するF1マシン。もしも部下がそれに似た状況にあるのだとしたら。あり得ないことが、ふつうに行なわれている。ブラック企業なんて言葉を持ち出すまでもなく、これは広く今の社会と会社を覆っている問題だと思います。